偏差値38の長距離未経験者が中央大学主将として箱根駅伝を走る物語

エリートのみが集まる世界に、凡人が飛び込む

#24「反発係数1以上」

夏が明ける。

走力も精神的な強さも身につけたことを実感していた。個人としてもチームとしても、戦う準備は整っている。私自身、箱根駅伝予選会を走る準備は出来ている。

しかし、私は選手として選ばれなかった。悔しさを抑え、チームのサポートを全力で取り組む。

天候は曇り。気温のせいなのか、緊張しているのか、もしくは自信からくる高揚感なのか、少し身震いする。

レースは完璧な流れで進む、今やチームの柱となった中山を含む3人が、日本人先頭集団を形成する。残りの選手もそれに続く。

準部員という経歴を持ちながら、日本人2位で中山はゴールする。その後もチーム全員完璧な走りをする。

結果を見ずとも勝利を確信した。プレッシャーと不安から解放された選手たちは、泣いて喜ぶものもいた。87年間の重みを1年間チームで背負ってきた時間はとても苦しかった。補欠として出走はしなかった私でさえ感じていたプレッシャー、選手にかかる重圧は計り知れない。

 

私たちのチームは3位で通過。歴史を途切れさせてしまった昨年の出来事、涙を飲むどころか枯れ果てていた惨状から一転、止まっていた時計の針が動き出す。

 

古豪から強豪へ、新生中央大学は新しい一歩を踏み出す。

 

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