偏差値38の長距離未経験者が中央大学主将として箱根駅伝を走る物語

エリートのみが集まる世界に、凡人が飛び込む

#25「はこ根駅伝」

年が明け箱根駅伝が訪れる。

チームとしては2年ぶりの箱根駅伝、新しい一歩を踏み出す。

私は補欠のメンバーとなり、箱根駅伝出場は一歩届かずお預けになる。3区を走る中山の付き添いになった。

当日は晴れ、中継所には各大学の選手が集まる。話したことはないが、名前と顔が一致するような、大学を代表する選手で溢れていた。

こんなにもすごい人たちと戦わなければならないのか、箱根駅伝予選会には出場していないもっと上の層にいるチームの選手に圧倒される。箱根駅伝のレベルを実感する。

1区がスタートしてから、2時間ほどで3区が始まる。

「頑張れよ」

「おう」

特に色味のない言葉をかける。

ともに準部員としてスタートした時のことを思い出しながら、普段と変わらぬ言葉で中山を見送る。

同じ準部員でスタートしてチームのエースにまで成長した中山、与えられた時間は同じ、何が原因で差がついてしまったのか、どこかで埋めるタイミングがあったのではないか、まだ自分の頑張りが足らないのか、

勢いよく走っていく中山の姿を見ていた私は中山への期待と、この舞台に立てていない悔しさの感情が入り混じっていた。

 

来年は必ず。

 

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