偏差値38の長距離未経験者が中央大学主将として箱根駅伝を走る物語

エリートのみが集まる世界に、凡人が飛び込む

#29「それでも這い上がる」

肝臓を壊してしまい、1ヶ月間走るどころか運動も禁止された。

その間いろいろと考えた。このまま部に残って陸上を続けてもいいのかと思った。主将でありながらチームに迷惑をかけ、みんなの目標を台無しにしている。そんな私が心を切り替えたと言ってのうのうと走ってていいのか。

そんな中でもやはり支えとなったのはチームメイトの存在だ。

「また頑張ろうぜ」

「次頑張りましょう」

1番やるせない気持ちであろうチームメイトがそう言って前を向いている。チームを引っ張る存在が前を向かないで何をしているのか。走りで失ったものは走りで取り戻す。チームのために、自分のためにやれることからやり始める。

夏合宿も始まり、少しずつ練習を再開した。しかし、25km走では3kmもついていけない、全力で1000mを走っても3分20秒を切るのがやっと。入学当時と変わらない運動量まで落ちてしまっていた。それでも諦めない、一緒にまた頑張ろうと言ってくれた仲間がいる中で、こんなところで負けていられない。

転んでも立ち上がり、泥臭くもがき続ける。

夏が明け、なんとか箱根駅伝予選会に間に合わせる事ができた。予選会のメンバーに選ばれ出走が決まった。不安がないわけでは無かった。また倒れるかもしれない、何がアクシデントが起きるかもしれない。そんな不安は感じつつ、自分に自信を持って挑む。

結果として、私はチーム9番手でゴールした。チームは全体8位で通過。良い結果とは言えないが、ひとまず安心していた。

無事予選会も通過する事ができ、11月、12月も順調に練習を積んだ。

 

 

年が明け箱根駅伝を迎える。

 

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