#29「それでも這い上がる」
肝臓を壊してしまい、1ヶ月間走るどころか運動も禁止された。
その間いろいろと考えた。このまま部に残って陸上を続けてもいいのかと思った。主将でありながらチームに迷惑をかけ、みんなの目標を台無しにしている。そんな私が心を切り替えたと言ってのうのうと走ってていいのか。
そんな中でもやはり支えとなったのはチームメイトの存在だ。
「また頑張ろうぜ」
「次頑張りましょう」
1番やるせない気持ちであろうチームメイトがそう言って前を向いている。チームを引っ張る存在が前を向かないで何をしているのか。走りで失ったものは走りで取り戻す。チームのために、自分のためにやれることからやり始める。
夏合宿も始まり、少しずつ練習を再開した。しかし、25km走では3kmもついていけない、全力で1000mを走っても3分20秒を切るのがやっと。入学当時と変わらない運動量まで落ちてしまっていた。それでも諦めない、一緒にまた頑張ろうと言ってくれた仲間がいる中で、こんなところで負けていられない。
転んでも立ち上がり、泥臭くもがき続ける。
夏が明け、なんとか箱根駅伝予選会に間に合わせる事ができた。予選会のメンバーに選ばれ出走が決まった。不安がないわけでは無かった。また倒れるかもしれない、何がアクシデントが起きるかもしれない。そんな不安は感じつつ、自分に自信を持って挑む。
結果として、私はチーム9番手でゴールした。チームは全体8位で通過。良い結果とは言えないが、ひとまず安心していた。
無事予選会も通過する事ができ、11月、12月も順調に練習を積んだ。
年が明け箱根駅伝を迎える。
最終話へ:#30「箱根駅伝」終