偏差値38の長距離未経験者が中央大学主将として箱根駅伝を走る物語

エリートのみが集まる世界に、凡人が飛び込む

#17「セタガヤの奇跡」

大学前期の講義も終わり、夏が来る。

中山はケガをしていた。同じ準部員の同志とはいえ、ライバルである。ここで差をつける思いで練習に取り組む。

高校時代に全国レベルの実績を残している同期や先輩に食らいついていく、ここでの争いに勝たなければ箱根駅伝に出場することはできない。

死にものぐるいで食らいついた夏合宿も終わり、9月の終わりに5000mの記録会に挑む。前回と同じ轍は踏まない。

しかし、悪魔は微笑む。

私が試合用として持ってきたシューズは練習用のシューズだった。トラックを走るには物足りないつくりになっている。まさかの出来事に動揺したままレースはスタートする。

そんな不安とは裏腹に、体は動く。5分ペースで3kmも走れなかったのが半年前のように感じる。

”いける!“

14分58秒でゴール。準部員の中で1番最初に私は正部員となった。

”コクシカンの悲劇“から一転、”セタガヤの奇跡“を起こしたのである。

 

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