偏差値38の長距離未経験者が中央大学主将として箱根駅伝を走る物語

エリートのみが集まる世界に、凡人が飛び込む

#18「はこねえき伝」

12月に準部員全員が無事、正式な部員になることができた。

そして、年が明け箱根駅伝が訪れる。私は補欠にも選ばれることはなく、チームのサポートに回る。4区の先輩の給水係だ。

初めて走る箱根路がユニフォームではなく、ジャージ姿であることに少しもどかしさを感じながらも、全力でサポートをする。

待機場所に着くと既に人が大勢いる。歩道を途切れず埋め尽くす人の数は異様な光景だった。肌で雰囲気を感じながら給水係としての準備を進める。

上空から聞こえるヘリコプターの音が大きくなってきた。沿道の応援もざわつき始める。巨大な放送車とともに、歓声が波のように迫ってくる。それに続き大学の襷をかけた選手が走ってくる。画面越しに見ていた光景が自分の目の前で起きていることに興奮していた。

先輩も見えてきた。箱根駅伝を走る先輩に給水しながら並走する。左右に埋め尽くされた観客から声援を浴びる。そして永遠に続く人の波。

圧倒されていた

 

20kmではなく20mであったが、初めて体感した箱根駅伝である。

 

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