偏差値38の長距離未経験者が中央大学主将として箱根駅伝を走る物語

エリートのみが集まる世界に、凡人が飛び込む

#15「マッド・サイエンティスト」

私にはまだまだ多くの試練がある。

それは学業との両立である。理工学部に所属している私は、練習拠点の近くの多摩で授業を受けるチームメイトとは違い、都心にあるキャンパスまで片道1時間かけて通学しなければならない。

朝4時に起床し練習、夜7時に帰宅し練習。限られた時間の中での練習を強いられる。

しかし、そんな言い訳など言ってられない。理工学部だからといって400mハンデを貰えるわけでも、ドーピングが許されるわけでもない。どうやったら差を詰められるのかを考える他ない。

通学中の電車では席が空いていようが座ることを禁じ、移動は全て階段を使う。授業が6階や8階で行われる時でも階段を使い足腰を鍛える。

ひとりで学食を食べていたのも友達がいなかったからではない、精神力を鍛えるためにひとりで食べていたのだ。

 

偉大なる科学者がそうであったように、自分の体を実験体とし、日々研究を重ねる。

 

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